2019年10月17日木曜日

第74回国民体育大会いきいき茨城ゆめ国体戦績戦評

令和最初の国体は、茨城県大子町で開催された。
今年も前年に続き台風による影響が危惧されたが日程の変更を要する事態にはならなかった。
しかし降雨により競技前半と後半で水量の変化が大きく、ライン取りを都度見直さなければならない状況となった。

式典会場


初日 WW1,500m
コース前半部は大きな流れの変化は無く淡々と漕ぐ力量を要し、スラロームコースからは流れも激しくなることから一転ライン取りに神経を使うコース設定となった。
公式練習にてラインの確認をする選手


成年女子の井口選手は、スラロームコース内を「愛梨ライン」として確実にゴール出来るラインを選択し、その結果1.8秒差で8位入賞、初の表彰台に登ることが出来た。
中学3年生での初出場、シニア選手を抑えての初入賞とダブルの快挙を成し遂げ岐阜県選手団としても幸先のよいスタートを切ることが出来た。
成年男子渡辺選手は、昨年からの練習にて追い込めなかった事が影響し中間タイムで6位と出遅れ、後半部の巻き返しもペースが上がらず結果6位入賞となった。
力漕する渡辺選手


二日目 SL25ゲート
前日のデモンストレーションからさらに水位が低下した。
男子K-1田中選手
1本目は果敢にゲートにアタックしたが、痛恨のハーフヘッドの判定。再調査を依頼するも覆らず2本目にかける事となった。
田中選手も含めたジュニアクラスは直前までの海外遠征にて、さらにレベルアップした感がある。これに対しオリンピック候補者を含むシニアクラスが追い越されまいとする踏ん張りもあり接戦となった。この状況において2本目はゲートタッチを1ゲートに抑え、タイムも大きく挽回し、6位入賞することが出来た。
男子C-1加藤選手
1本目は集中力を維持した状態にてゲートに臨むことが出来、ノーミスという完璧な漕ぎで2着の好位置に着けた。
トップとのタイム差2秒を如何に縮めるか、今年もGSSC(岐阜県スポーツ科学センター)の万全のバックアップ体制によるビデオ解析を行い、ライン取りの確認とタイムを縮められる区間の戦略を練り上げ2本目に臨んだ。
2本目も集中力を持続した状態にてノーミスにまとめることが出来、タイムも戦略通り5秒縮め、1本目1位の選手を3秒をも上回る最高の結果にて最終漕者を待った。
最終漕者は流石日本代表、オリンピック出場を争っている選手であり、こちらもノーミスで1本目の記録をさらに4秒縮めるというハイレベルで会場全体が緊張感を持った好レースとなった。
この結果、わずか1.35秒及ばず2位という非常に残念ではあるが、好成績を残す事ができた。
天気予報によると夜半から降雨となっており、翌日の水量の変化が気掛かりになりつつ二日目の競技を終えた。

コースをイメージする田中選手


三日目 SL15ゲート
夜半からの降雨により水量増となった。実行委員会発表では「時間当たり1cm増加しており、更に増加するだろう」との事であった。
水量が変化する前の状態でのゲートセットによって、当日はその影響もあってかベテラン選手においてもゲートに接触する選手が多く見られた。
この状態で田中選手は一本目に接触1回と踏ん張り7位とし、2本目の巻き返しで入賞が十分に狙える位置に着けた。
加藤選手は、水量の変化をパドルコントロールで微妙に調整し一本目ノーミス4位とし、前日の集中力をもってすれば更なる上位入賞が期待できる位置に着けた。
全種目の一本目が終了した時点でも雨は降り続けていたため臨時監督会議が招集され、「ゲート調整を実施する事」と、それに合わせ「調整時間中は立ち入り禁止区域への入場を許可する」事が通達された。
水量が増加したことにより流速も上がり、二本目で巻き返しを狙う選手たちの記録も次々と塗り替えられ、3秒近くタイムが縮む選手が続出した。
田中選手も2秒近くタイムを縮めたが、善戦及ばず10位と入賞を逃し2種目入賞とはならなかった。
加藤選手の二本目も2秒近くタイムを縮めたが、接触2回が響き一本目の記録が採用され4位となり連日の入賞となった。シニアでもベテランの域に近い加藤選手は、ライン取り、テクニックにおいては若手には負けないが、体力的に連戦は厳しくなってきている。
「生涯国体獲得ポイントを更に積み上げる!」との心強い宣言も発せられ、まだまだポイントゲッターとして頑張ってもらいたい。

集中力を高める加藤選手


最終日 WWスプリント
前日の降雨も明け方には上がり水量は減少傾向となり、大会前の公式練習時に戻りつつあった。初日の初出場、初入賞という快挙を成し遂げた井口選手に期待はかかり、渡辺選手の引退レースでもあり更に期待のかかるところである。
一本目 井口選手
一番漕者という緊張はあったものの、順調なスタートを切った。コース中盤では、1,500mで選択した「愛梨コース」を漕行したが、水量・水流が読み切れず若干左岸側に押し出され隠れ岩にバウ左を衝突させ、あえなく脱艇となってしまった。すぐさま自力で艇を起こし再乗艇できるかと思いきや、パドルが下流へ・・・万事休す。
二本目に向けて再度ラインを確認しなおし、記録を残す事を最優先とした。

姉を応援

一本目 渡辺選手
今日が現役最後のレースとなる。我々選手団も承知しているが、あえて普段と変わらず接する。
初日のレース後、艇のボトムを黙々と磨き上げ、極限まで水の抵抗を減らそうとする道具へのこだわりは、最後まで変わることはない。この気持ちこそが、8連覇という偉業も達成してきた要因に違いない。
40秒台前半の記録が多い中、3漕前の好敵手である山根選手(岡山県)が39秒台を叩き出した。場内実況と歓声から否が応でも集中力が高まり、感覚を研ぎ澄ませ最終漕者としてスタート。完璧なレースであったが、0.74秒及ばず2着につけた。
一本目のレースを確認する渡辺選手

二本目 井口選手
一本目のミスをしっかり修正し、一本目の入賞ラインのタイムを出すことが出来た。
二本目は各選手とも確実にタイムを縮めてきたことから二種目入賞とはならなかったが、入賞まで5秒の差であった。ワイルドウォーター競技を始めて一年足らずの間の成長は目覚ましく、これからの活躍に期待が持てる結果となった。

井口選手コースをクリア

二本目 渡辺選手
現役最後のレース。
乗艇前に成績掲示所に居た私のところに来て「行ってきます」と。
前漕以上に集中しているのが伝わる。
記録としては、0.45秒縮めたが、山根選手もさらに0.27秒縮めた事から、逆転はできず2位入賞となり、2種目共入賞することが出来た。

最後のレースに向かう渡辺選手


ゴール後の検艇所にて、「漕ぎ切りました!」と、清々しい表情をして出迎えた我々に対して言えた事が本当によかった。
体調の不安を抱えながら調整し、その状況の中で限界のレースが出来た選手を精一杯応援できた我々も悔いはありません。
お疲れ様でした。

現役最後の力漕

選手会による胴上げ

今年の各県の国体出場メンバーは、種目が増えたことに伴い本選の出場枠が変更された事から大きく変わっていた。
来年度の岐阜県選手団は、進学やメンバー交代などで練習環境も大きく変化する中での編成となるが、鹿児島国体での上位入賞を目指して一丸となって頑張りましょう。

「これからもずっとカヌーが好きだから」


岐阜県選手団と岐阜県カヌー協会からの派遣競技役員


先日の台風19号の影響で、茨城国体カヌー(ワイルドウォーター・スラローム)競技開催地の大子町が大きな被害を受けました。
被害に遭われた方々に心よりお見舞いを申し上げます。



帰路水郡線車窓から会場を望む

番外編
恒例となったレジェンドカップ。
今年は、加藤理事長と近藤理事が出場。往年の華麗なパドルさばきを見ることが出来ました。
加藤理事長

近藤理事



岐阜県選手団監督 高見 文博



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